テッド・チャン情報メモ

ポッドキャスト:映画『Looper』を語る
(2016/4/15)

 

 

ちょっと時間が経ってしまいましたが、SF映画をサカナにしたポッドキャストにテッド・チャンさんがゲスト出演しました。音源は下記からダウンロードできます!参考リンクや内容紹介もあるのでぜひぜひご覧ください。

http://www.decipherscifi.com/looper-ted-chiang-movie-podcast-episode-25/

YouTubeに上がってるハイライト。(音声のみ)

映画トークは以前お知り合いのインタビュー(今までで一番面白いインタビューと クラリオンワークショップ進行中 (2012/7/12))でもチラッとあって、すごく面白かったんです。映画を見に行ったあとにその映画についてしゃべるのが好きだとかあったので(映画好きはこれみんな好きですよね(笑))、その手の気楽な映画トーク、すっごく聞きたいと思ってました!嬉しい~♪

で、お題はタイムトラベルもののアクション映画『ルーパー』。これ自分も劇場で見たんですが、細かいところ忘れてたので話についていけず、レンタルで見直しました。(「ジェフ・ダニエルズなんて出てたっけ?」というレベルで忘れてたです(^^;))

キャストはジョセフ・ゴードン=レヴィット、ブルース・ウィリス、エミリー・ブラント、ジェフ・ダニエルズ、ポール・ダノ他。設定はタイムマシンが発明されたもののその使用がご法度となっている世界。一人一人をトレースするテクノロジーが普及しているため、証拠を残さず人を殺すことが難しくなっています。で、闇社会が禁制のタイムマシンを使って「消したい」人間を三十年前の世界に送り込み、現地で雇われている暗殺者(これが「ルーパー」)が殺して死体を始末する、というサイクルができています。ルーパーは最終的には未来の自分自身を口封じのために殺さなくてはなりませんが(これを「ループを閉じる」という)、その時には莫大な報酬が得られ、残りの三十年を思い切り贅沢に過ごすという刹那的な契約になっています。(だから「ループを閉じた」ルーパーは仲間とヤケクソの祝杯をあげたりします)

ゴードン=レヴィットがブルース・ウィリスの若い頃を演じていて、鼻など特殊メイクで似せている…のですが、私にはまったく似て見えず、正直そっちが気になって話に集中できませんでした。(^^;)ちなみにチャンさんは「気が逸れるって人がたくさんいるけど僕は気にならなかった」と言っています。

これじつはループになってないよね
タイムマシンの使い道として最悪
送る先を深海とか火口とかにしとけば殺し屋いらないじゃん

などの楽しいツッコミから、
SFアクション映画で母性がテーマになってるのは珍しいよ
という鋭い指摘まで、ほんとに「いかにも映画見たあとの気軽なトーク」で楽しめました!
ただ、チャンさんの英語は比較的発音が聴き取りやすいのですが、本来のホスト二人のしゃべりが私には難物で、再生速度落としてもわからないところがありました~。(^^;)

面白かったのが、チャンさんが映画を前半と後半に分け、前半が理にかなってなくて気に入らないので、脳内で「書き直して」みた、という話。(「オレならこうする」は映画トークの最高の醍醐味ですよね!(笑))
チャンさんバージョンでは…… タイムマシンが禁制になってるのはそのままにして、それを密かに使う動機を「儲けるため」にする(競馬とか、古典的にタイムトラベルもので思いつく利益って確かにこの辺ですよね)。で、政府はその行為も禁じていて、それをしようとタイムトラベルする人間を、やはり暗殺者を使って殺す。違うのは、ルーパーがギャングではなく政府に雇われている、というところ。

後半の流れは気に入ってるので、それをくっつければもっといい映画になる…と思ったそうなんですが、どうも聞いてて「そうかなあ…?」と違和感ありました。(この方の意見に違和感覚えるのはめったにないんですが)…そしたらすぐに「でもそれじゃうまくいかない」とご自分で言っていて、なぜかというと、この映画は「暴力のサイクルを断ち切る」というテーマだから、と明確な分析。だから前半の過度に暴力的な部分がないと成立しないんですね。

タイムトラべルものの映画は大きく分けて「運命は変えられる」というものと、「変えられない」というものと二つあり、『ルーパー』は「変えられる」のほうだ、という話も出ました。以前ウェブでのレクチャー("Time Travel Lecture" Ted Chiangパート・やっと聴けました(^ ^;) (2011/7/31))で、この「運命は変えられる」といテーマは時代と共に人の好みが変わってきたことの反映でもあり、「自由意志によって運命を変えられる」という考え方を人が好むようになってきたからだ、という指摘もなさってたのを思い出しました。「自由意志」の問題はご興味あるところなのかもしれませんね。


他に、つい昨日、映画版『あなたの人生の物語』のトレイラーのスクリーニングが行われた、というニュースを拾ったのですが、長くなるので別の記事にします。(映像そのものがまだネットには流れてないようなのですが、少し待てば出るかもしれないし……)評判よろしくてちょっとドキドキします!

 

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