テッド・チャン情報メモ

パネルディスカッション動画:"Who and What Will Get to Think the Future?"
(2014/10/26)

2014/10/2に行われたパネルディスカッションイベント"Can We Imagine Our Way to a Better Future?"(私たちはより良い未来を想像できるだろうか?)の動画がYoutubeに上がってました。リアルタイムで配信されていたんですが、立て込んでて見損ねたので、落ち着いて見られるようにしてくださってウレシイです❤

チャンさんの参加したパートのテーマは"Who and What Will Get to Think the Future?"(誰が、そして何が未来を考えるようになるのか?)。私たちがすでにコンピュータに依存した思考形態になっていることをグーグルなどを例に話していて、これをCognitive Outsourcing(認知・知的活動のアウトソーシング)と呼んでいます。(以前からある言い回しらしい) ビジネス用語のイメージがある「アウトソーシング(外部委託」という言葉が、こういう文脈で使われてるのを面白く感じました。

早口なところ、笑いが出ているところがことごとく聞き取れないので(とくに司会者さんの言葉が聴き取りにくい。トランスクリプト求ム!!(^^;)) 全体の要約とは行きませんが、聞き取れた中から印象的だったところを記録しておきます。

最初に紹介していた、サイエンス・ライターのスティーブン・ジョンソンのエピソード。この方が使っているライティング支援ソフト(?)で、
「書いているものをスキャンして、随時役に立ちそうな情報を、個人的データベースから吐き出してくれるソフト」
ってのがあるらしいんです。つまりあるトピックと別のトピックを結びつける…人間なら「連想する」部分…をやってくれちゃうんですね。で、それを使ったとき
「このアイデアを思いついたのは自分か、それともソフトか?」

……問題提起以前に、「なにその便利なソフト。ほしい!」とか思っちゃったんですが(笑)、名前は出てなかったです。うーん気になる。
(※偶然ですが、このスティーブン・ジョンソンさん、今週Eテレでやる『スーパープレゼンテーション』に出ます。テーマは「アイデアはこうして生まれる」。ちょっと関係がありそうかな?見てみようと思ってます♪)

次に、グーグルなどに私たちがますます頼りつつあること。
「第二の脳(secondary brains)」、前述の 「認知・知的活動のアウトソーシング(cognitive outsourcing)」といった言葉で強調されてます。

その次に司会者さんが持ち出したキーワードがセレンディピティ
偶然の力でなにかを発見することですが、これについても、たとえばGoogleやwikipediaを使うときにセレンディピティを経験している、と指摘しています。 でもチャンさんが強調していたのは、それが参照されるにとどまらず、その事項に関するおおぜいの考え方に影響を与えてくる、というところ。
(…同じセレンディピティとは言えるかもしれないけれど、ネットは同じ言葉をググると誰でも同じリストを目にするので、「行った図書館でたまたま隣にあった本」みたいな「偶然」とはかなり異質ですね)

後半、ソクラテスがした「書く事」(=「書かれたものを読むこと」)への批判を引用した「何かを実際に知ることの代わりに、知恵の幻影を作り出すだけ」というくだり(『パイドロス』に出てくるエジプトの神の話が元ネタらしい)や、「インターネットを奪われたら自分自身を失ったように感じるだろう。これは予想されていなかった副作用だ」など、やはりネットに依存することで何かが損なわれている、という見方が出てきます。が、いつもどおりそう過激な否定的回答とか対策とかいう話でなく、現状を言語化して指摘する、という感じ。時間がちょっと足りなかったかな、という印象はあります。いきなりシメの言葉を促されて笑ってるあたり。(笑)
(でもこういう、「言われてみればみんな感じてたよね」ということを、きちんと言語化して意識させてくれるのが、広義の知識人さんの役割ではと思います)

個人的な体験として、ツイッターを始めた頃から本を読むのが難しくなりました。長めのセンテンスを理解するのに必要な程度の「作業記憶」に苦労することがあるんです。 このパネルはそこまで「弊害」という切り口ではありませんが、ネットが思考に影響を与える、という意味では興味深いテーマでした。
(最近は自衛手段として、ネットに接続する時間を制限するように努力してます。現状自分に必要だからゼロにはできないんですけど。…チャンさんはツイッターも公式サイトもやってないようですが、意識しての選択なんだろうな~…いや、公式サイトがあってくれたら情報追うのラクになるんですけどね(^^;))

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このイベントは、SF作家ニール・スティーヴンスンの問題提起、「現在のサイエンス・フィクションは現実の科学者やエンジニアにインスピレーションを与えていない」に触発されたものとのこと。主催の団体"Future Tense"はシンクタンクとネットマガジンのコラボで、「社会を変革するようなテクノロジーを探求」してるんだそうです。

このコンセプトで作家・思想家等を交えたアンソロジー(Hieroglyph: Stories and Visions for a Better Future)も発行されていて、このイベントに参加してるチャンさん以外の作家さんは、この本に参加してる方たちですね。kindle版のサンプルから目次を見てみたんですけど、イベントに出た方の他にグレゴリー・ベンフォード、デイヴィッド・ブリン、ブルース・スターリング、ルディ・ラッカーなど、有名なSF作家さんたちも名を連ねてました。

ここではテッド・チャンさんの動画を貼らせていただきましたが、公式ページでは他のゲスト(同じくSF作家のニール・スティーヴンスン、エリザベス・ベアなど)のパネルもまとめて見ることができます。Youtubeにもあると思います。ご興味のある方はどうぞ。

公式ページ Future Tense: Can We Imagine Our Way to a Better Future? 

 

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