2010/8/7~8 日本SF大会 企画展示
『SF、ホラーを生ける/SFいけばなの試み』

 

“And in that way I live again, through you.”
(そうして私はふたたび生きる。あなたを通して)

From “Exhalation” (2008・Ted Chiang) ※1
『息吹』(2008・テッド・チャン)より※2

※1 “Eclipse Two” (Edited by Jonathan Strahan)収録
※2 SFマガジン2010年1月号 邦訳掲載(大森望・訳)
(展示タイトルに引用したフレーズの訳は、展示主催者訳によります)

 

★SPECIAL THANKS★

大会スタッフ様のご提案とご協力により、テーマにした短編小説の作者Ted Chiangさんに
試作写真をご覧いただき、 コメントをいただくという幸運に恵まれました。

テッド・チャン氏よりいただいたコメント

I'm delighted that my story provided inspiration for an ikebana artist like Ms. Ishii. This is not something I would have expected, but upon reflection, I can see how it is fitting. "Exhalation" is, in one sense, about the possibility of beauty arising out of the arrangement of simpler components, and it seems to me that the same is true of ikebana.

(私の物語が、イシイ氏のようなイケバナ・アーティストにインスピレーションを与えたことを嬉しく思います。これは予想もしなかったことですが、考えてみると、それがいかに似つかわしいことであるか理解できます。 “Exhalation”は、ある意味では、より単純なパーツを配置したものから美が立ち現れうることを描いており、同じことが生け花にあてはまるように、私には思われます)

(スタッフ様よりお伝えいただいたのが本名だったので、文中イシイとなっています)

あらためてChiang氏と、大会スタッフ様(嶋田洋一様、平井博英様)に
心からお礼を申し上げます。 ありがとうございました。
あまりに過分です。一生の宝物です。

 

 

 

(テーマについて)
大好きなSF短編からのイメージです。 初めて英語で読みきったSFでもありまして、
イメージは原文で読んだときの印象から出てきたものです。

 

(展示時の解説文)
「アルゴンを詰めた肺を交換しながら生きる、我々とはべつの生命体の世界。
世界がゆくゆく終焉することを悟った主人公が、のちの世にそれを読む「誰か」に向けてつづる言葉・・・。
緻密に構築された独特の世界はもちろん、切なさや絶望と、ある種の解放感とを
同時に味わわせてくれる圧巻のイメージ、その美しさに魅了されました。

展示は、作中に出てくる黄金のリーフと生命、空気の流れのイメージが、自分の中で形になっていったものです。」

空気の流れが上からきて、金の葉がざわざわと動き、そこから生命というか、思考というか、
そういうものが再生されるというイメージです。

 


花材は最後の試作と同じ、ヘリコニア、グリーンネックレス、
ドライ素材(晒しホーキ草、ブベッセンス、ベビーマンチャ、カーリーグラス)です。

試作のときのヘリコニアが大きかったので、色といい、「どっちかというと鳳凰みたいだぞ?(汗)」
という心配があったのですが、幸か不幸か本番用に届いたものが小ぶりだったので、
鳥っぽくならずに方向性だけ出てくれたかな、と思います。
金色のほうが強くなったので、よかったと思います。

 


写真ではわかりづらいですが、金の葉だけでなく、銅色の葉も足元に加えてみました。
(小説全体が銅板に刻まれた言葉、という設定なのです)

… 力不足だと思いますが、これが今の精一杯。悔いはございませんです。

 

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