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(8) 探偵はうちにいる

二次小説
探偵はうちにいる
(A5・プリンタ印刷・28ページ)
300円 2013年1月発行

1/6が正典ホームズの誕生日とされている、ということで、
それにちなんだ探偵オレ得コメディ小説(お色気ちょっぴり(笑))と、 Pixiv公開イラスト・漫画の再録です。

 

目次

イラスト お兄ちゃんといっしょ(クリスマスのホームズ兄弟・子供時代)

イラスト 「この人たちはいつもこうです」
      (クリスマスのダンシング・マーティンとホームズ兄弟)

小説 Happy Birthday, Sherlock Holmes

イラスト ホー(ムズ)の一族(ポーの一族パロディ)

漫画 ベネさん成田降臨

 

 

イラスト お兄ちゃんといっしょ~ホームズ兄弟のクリスマス~

 

小説本文見本 (冒頭部分)

  ベイカー街221bの昼下がり。テーブルのうえにあったジョンの携帯が鳴った。
  お茶を飲んでいたジョンは、読んでいた新聞から目を離さずに手を伸ばした。横からシャーロックの手が伸びて先にとった。ジョンは目を剥いた。
「シャーロック!」
「ジョン・ワトスン」
  シャーロックが電話に応えた。
  ジョンが取り返そうとするのを面白そうにかわしながら、シャーロックは電話の相手の言葉に聞き入った。顔が曇り、一瞬半端な笑みを浮かべ、すぐに何食わぬ顔になってジョンを見た。
「…ちょっと待ってくれ」
  シャーロックは通話口を握ると咳払いをした。
「レストランの予約の確認だ。ずいぶん張り込んだな」
「返せ」
「聞いてない」
「言ってない」
「僕だって言ってない」
「は?」
「まあ調べるのは簡単…」
「何を」
「誕生日」
「…君じゃない」
「……」
  一瞬シャーロックの動きが止まった。その隙をついて、ジョンがシャーロックの手から携帯を奪った。
「…うん、そう…窓際の席を。違う。牛肉はだめだ。…じゃあそれを」
「…懲りないな」
  シャーロックはつぶやくと、ガウンのすそをひるがえして椅子にふんぞり返った。ジョンは携帯を切ると振り返って口をあけた。言葉が飛び出す前にシャーロックが人差し指をあげた。
「彼女はヒンズー教徒?」
「いったいなんのつもりだ。僕の電話に出るな!」
「いや違う。オーガニックフードにはまってるエコロジスト。フェアトレードのTシャツを着て部屋に香を焚いて…君も最近匂う」
  シャーロックはうんざりした顔でティーカップを持ち上げ、空いたほうの手をひらひらさせた。
  ジョンは彼を睨みながら携帯を振った。
「いいか、こんなことを…」
  …言いかけたところで、シャーロックが新聞を乱暴に取り上げてそっぽを向いた。
  ジョンはため息をついた。事件がないと、シャーロックは退屈して日に日に子供じみてくる。もう二週間近くたいした事件がなかった。ジョンは小さな声で言った。
「…もうするな」
  シャーロックは答えずに、バサバサと音をたてて新聞をめくった。ジョンは椅子に戻り、携帯をポケットに入れて自分のお茶を注ぎ足しながら聞いた。
「…今日?」
「ん?」
「誕生日」
「忘れてた」
「……」
  ばかばかしい。なんで男の誕生日なんか気にしなくちゃならない。なんでこいつの機嫌なんかとる必要がある。ジョンがカップに向かって心の中でぶつぶつ言っていると、今度はシャーロックの携帯が鳴った。電話に出た彼の顔が見る見る怒りに満ちていった。
「ふざけるな」
  そう言うと彼は通話を切り、ジョンを睨みつけた。ジョンは口に運びかけたカップを空中で停止させた。
「…なんだよ」
「僕をダシにしたな」
「なに?」
「ちがう。君がダシにされてる」
「なんの話だ」
  シャーロックは噛みつくように言った。
「なんで僕がノコノコついて行くことになってるんだ。君のデートに!」
「ばかな。誰からの電話だ?」
「フェアトレードの女だよ!席を三つにするから一緒に誕生日を祝おうだとさ。なんのつもりだ?だいたいなんでこの番号を知ってるんだ?ウェブサイトにあるのとは違うぞ。君が教えたのか」
「教えるわけないだろ」
  ジョンは自分の携帯を出してかけた。
「…出ない」
「からかわれてるんだ」
「彼女はそんなタイプじゃ…」
  ジョンの携帯からメールの着信音がした。ジョンは文面を見て息を飲んだ。そして黙ってシャーロックに画面を見せた。
「……」
  シャーロックは目を細めた。
「…シャーロック、君にきた電話は…彼女じゃない」
「結論に飛びつくな。僕には君の『最新の』ガールフレンドの声なんて判別できない」
  シャーロックはガウンを脱ぎ、ぼんやりしているジョンに言った。
「そのメールじゃ居場所がわからない。彼女の住所は知ってるんだな?」
「…ん」
「知ってるんだな?」
「ああ」
「しっかりしろ。外でタクシー拾ってる」
  シャーロックは上着を着ると階段を駆け下りた。ジョンは我に返ったようにもう一度携帯の画面を見た。
『助けてジョン』

・・・・・・・・・・

……

 

 

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