お試し読み
ウルトビーズ/天使の展開

目次

友愛・スキャンダル

友愛の人

ジャン・マレー

オルフェ・詩人

オルフェウス神話

戯曲オルフェ

映画オルフェ

字幕の問題

“ゾーン”~コクトーは異次元を見たか?~

ウルトビーズ・天使の展開

フランソワ・ペリエ小特集


誌面体裁見本
(スキャンにムラがありますが、本文用紙がレモン色のためと、明朝・ゴシック混合組のためです。
再版分はクリーム色か白になります。)

4~5ページ
(『友愛の人』部分)


6~7ページ
(『友愛の人』~『ジャン・マレー』部分)


12~13ページ
(『オルフェウス神話』~『“ゾーン”~コクトーは異次元を見たか?』部分)


 

 

本文『友愛の人』冒頭部分

■友愛の人

ジャン・コクトーは、その作品以上に彼の人生そのものが面白い、という人であります。ピカソやココ・シャネルを筆頭に、有名な作家、芸術家がひしめき合うような交友関係。コクトーという人は、基本的におしゃべりで人好きで、けっして一人では食事をしないような人だったようにお見受けします。

そんな中でもやはり目をひくのが、ジャン・マレーをはじめとして同性愛関係にあった恋人たち。最初はそのスキャンダラスなイメージしかなかったくらいです。(^ ^;)(実際には女性との付き合いももちろんしていて、人妻を妊娠させたりしているんですが(笑))

年下の美青年と暮らす人気作家、といってしまうと、すごく薄っぺらいステレオタイプが目に浮かんでしまいますが、当事者の言葉を読んでみると、むしろ恋愛関係のあるなしにかかわらず、相手にとってよかれと思う援助を惜しみなく与え、家族のような関係を築いてしまう人…お人よしに近い…という感じがします。人を愛する・絆を結ぶ能力の高さを感じて、ちょっとうらやましい(笑)。でもそのぶんたくさんの苦しみを経験した人でもあります。

まじめな話は市販の評論本におまかせして、ここでは彼の愛情・友愛の対象となったおもな男性たちを数人、年代順にピックアップしてみます。

ピエール・ダルジュロス

『恐るべき子供たち』その他に出てくるダルジュロスのモデルになった同級生。物語では、彼に惹かれる主人公に石の入った雪玉をぶつけて心身ともに傷つける、魅力的で残酷なガキ大将として描かれますが、ご本人は優等生であったそう。ほかの子供たちと比べると抜きん出て発育がよかったそうで、男性的な体つきがコクトーにとっては魅力だったようです。

レーモン・ラディゲ

『肉体の悪魔』(のちにジェラール・フィリップ主演で映画になりました)等で知られる早世の天才作家。出会ったときはコクトー30歳、ラディゲ17歳。女性関係が派手だったようですが、コクトーはパトロン的庇護を与えつつ、彼から学んでもいたようです。(「僕はいつも年下から学ぶ」とはコクトーの言葉)毎日一定のページ数書かなければ部屋から出さないようにして(早い話が缶詰?(笑))『ドルジェル伯の舞踏会』を書かせたとか。『肉体の悪魔』は一説によると14歳のときのアイデアというからたしかに早熟。(私は映画しか見ていなくて青臭い印象を持ってますが、14と聞けば納得…)後年ジャン・マレーらと撮った写真にもラディゲの胸像が写っています。お世辞にも美形とはいえませんが、カリスマ性のある人だったようです。わずか20歳で病死。彼の死の痛手からコクトーは阿片中毒になりました。

(以下マルセル・キル、エドゥアール・デルミ、ジャン・マレーと続きます・・・)

『“ゾーン”~コクトーは異次元を見たか?』冒頭部分

■“ゾーン”~コクトーは異次元を見たか?~

戯曲になかった大きな要素の一つが、現世からあの世(?)へ向かう途中、ゾーンという空間の描写です。このシーンのウルトビーズが美しいので何度も見てたんですが(笑)、ちょっとものすごい意味を発見しました!

まず、このシーンは廃墟のように見える街の路地を進んでいくのですが、オルフェの動きは鈍く、なにか空気抵抗でも受けているようにスローな演技をしています。かたやウルトビーズは、足さえ動かさずに滑らかに前進します。奇妙なことにウルトビーズだけが強い向かい風とめまぐるしく向きの変わる光を受けて、まぶしそうにしています。

画面としては、左側にバストアップで正面を向いたウルトビーズ、その右手後方に、ゆっくりした動作で手探りするようにしてあとをついてくるオルフェが見えます。カメラは二人が近づいてくる速度に合わせて後退していくので、位置関係や二人の画面上の大きさは変わりません。(※)

※こんな感じです

 さて、このシーンをコクトーはどう撮っているか。現在ならCGでちょちょいのぱーですが、1949年の映画ですから、ここではスクリーン・プロセスという、この時代によく使われたトリックを使っています。・・・

(以下略)