詳細コンテンツ
ビルボ食堂
目次 スッポリいらすと ビルボさんちの食物ぐら だめ小説・ホビットの穴 参考文献(+タマゴ六つおとして…)
|
本文サンプル
小説冒頭部分
【だめ小説】ホビットの穴(サンプル) トーリン・オーケンシールドは、ビルボに命をすくわれてからというもの、すっかりこの小さなホビットのことを気に入ってしまいました。これまではただのお荷物だと思っていたので、ろくに気をつけていませんでした。でもよく見てみると、とてもかわいい顔をしています。目は大きく、明るい茶色の髪はすてきにちぢれていて、笑うと子供のようにむじゃきな顔になります。もっともビルボは心配しょうでしたから、みけんにしわをよせていることのほうが多かったのですが、それもまたかわいいのでした。おまけになかなか物知りで(ビルボは本をよむのがだいすきだったので、よその国のこともたくさん知っていました)、話をしてもたいくつすることがありませんでした。 トーリンは歩くときはビルボとならんで歩き、馬にのる時はくつわをならべ、食事の時はとなりにすわりました。そうしてずっと話をしていても、ビルボのおもしろい話はつきないのでした。トーリンは、ホビットについて聞いていたうわさ話を思い出しました。ほんもののホビットに確かめたいと思っていたのですが、なかなかきりだせないでいました。あわてなくともいつか聞けるだろう、と、トーリンは思っていました。旅はまだまだ長くつづくのです。 ある夜のこと、旅のなかまたちは、岩山のかげの大きなほら穴を見つけ、注意ぶかくそこを調べて(というのは、まえに泊まったほら穴では、えらいめにあったからです)そこでねむることにしました。ビルボは毛布をかぶってプルプルふるえていました。やねのあるところでねむるのはひさしぶりで、とつぜんじぶんのすてきなホビット穴が思い出されたのです。なんとすてきなおうちだったことでしょう。清潔で、気持ちよくかわいていて、だんろには明るい火が燃え、台所にはなにか煮えていて、おいしそうな匂いがしていたものです。 それにひきかえ、ここはどうでしょう。今日は屋根はあるものの、ガンダルフは火を使うことをゆるしませんでした。みんなは水と、すこしばかりのかたい干し肉で晩ごはんをすませたのでした。じめじめした岩のうえでは、しきものをしいて毛布をかぶっていても、さむくてしかたがありません。すっかり慣れたと思っていたのに、ビルボはそれがとてもつらくなりました。ホビット穴のじぶんのベッドのやわらかさやあたたかさを思い出し、どうしてこんなところまできてしまったんだろう、と思いました。 近くでよこになっていたトーリンは、ビルボが鼻をすすりあげる音に気づきました。トーリンはそうっとビルボに近づくと、 トーリンは、ホビットの匂いをこんなに近くでかぐのははじめてでした。ほんのりあまいミルクのような匂いがします。ホビットというものは、みんなこんなにおいしそうな匂いがするのだろうか。それともこのビルボがとくべつなのだろうか。トーリンはそう思いながら、鼻をくんくんいわせました。 ビルボはどきどきしました。ビルボもドワーフのにおいをこんなに近くでかぐのははじめてでした。ひどくくさくて、何ヶ月おふろにはいっていないのだろうとビルボは思いました。でも長いかみとひげにはよい香りのする油がすりこんであって、ビルボはその香りをすいこむと、すこし酔っぱらったようなかんじがしました。なんだか目がまわって、すぐ耳元でするトーリンの声が、どこかとおくから聞こえるようです。 だしぬけに、暖かくてぬれたものがビルボのほっぺたにさわりました。トーリンの舌です。ホビットは匂いのとおりに、なめても甘いのだろうかと思ったのです。ビルボはぴくりとして、高い音で鼻をならしました。 (…後略…) |