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ビルボ食堂

 

目次

スッポリいらすと
萌えたぜホビット!(まえがきにかえて)

ビルボさんちの食物ぐら
※(❤)マークはレシピ付です。

ケーキ
ビルボ・プレート
シードケーキ(❤)
バターをぬったスコーン/ミンス・パイ(❤)(ミンスパイのみ)
ラズベリー・ジャム(❤)
(ビルボちゃん、木イチゴを摘む)
お飲みもの
アップル・タルト(❤)
ポークパイ(❤)
コールド・チキン
ピクルス(❤)
ビスケット(❤)
番外編・卵六つのハムエッグ

だめ小説・ホビットの穴

参考文献(+タマゴ六つおとして…)
シリアスビルボいらすと
あとがき

 

 

 

本文サンプル

 

 

 

小説冒頭部分

【だめ小説】ホビットの穴(サンプル)

 トーリン・オーケンシールドは、ビルボに命をすくわれてからというもの、すっかりこの小さなホビットのことを気に入ってしまいました。これまではただのお荷物だと思っていたので、ろくに気をつけていませんでした。でもよく見てみると、とてもかわいい顔をしています。目は大きく、明るい茶色の髪はすてきにちぢれていて、笑うと子供のようにむじゃきな顔になります。もっともビルボは心配しょうでしたから、みけんにしわをよせていることのほうが多かったのですが、それもまたかわいいのでした。おまけになかなか物知りで(ビルボは本をよむのがだいすきだったので、よその国のこともたくさん知っていました)、話をしてもたいくつすることがありませんでした。

 トーリンは歩くときはビルボとならんで歩き、馬にのる時はくつわをならべ、食事の時はとなりにすわりました。そうしてずっと話をしていても、ビルボのおもしろい話はつきないのでした。トーリンは、ホビットについて聞いていたうわさ話を思い出しました。ほんもののホビットに確かめたいと思っていたのですが、なかなかきりだせないでいました。あわてなくともいつか聞けるだろう、と、トーリンは思っていました。旅はまだまだ長くつづくのです。

ある夜のこと、旅のなかまたちは、岩山のかげの大きなほら穴を見つけ、注意ぶかくそこを調べて(というのは、まえに泊まったほら穴では、えらいめにあったからです)そこでねむることにしました。ビルボは毛布をかぶってプルプルふるえていました。やねのあるところでねむるのはひさしぶりで、とつぜんじぶんのすてきなホビット穴が思い出されたのです。なんとすてきなおうちだったことでしょう。清潔で、気持ちよくかわいていて、だんろには明るい火が燃え、台所にはなにか煮えていて、おいしそうな匂いがしていたものです。

 それにひきかえ、ここはどうでしょう。今日は屋根はあるものの、ガンダルフは火を使うことをゆるしませんでした。みんなは水と、すこしばかりのかたい干し肉で晩ごはんをすませたのでした。じめじめした岩のうえでは、しきものをしいて毛布をかぶっていても、さむくてしかたがありません。すっかり慣れたと思っていたのに、ビルボはそれがとてもつらくなりました。ホビット穴のじぶんのベッドのやわらかさやあたたかさを思い出し、どうしてこんなところまできてしまったんだろう、と思いました。

 近くでよこになっていたトーリンは、ビルボが鼻をすすりあげる音に気づきました。トーリンはそうっとビルボに近づくと、
「どうしたのじゃ、バギンズどの」
  と、小さな声で聞きました。
「なんでもありません」
  ビルボは泣いていたのが恥ずかしくなって、顔を見せないように背をむけて答えました。そしてまた鼻をすすりました。
「ねむれないのか」
「はい」
「わしもじゃ」
  トーリンはビルボのよぐ横に頭をおちつけました。
「そうじゃ。またなにか話をしてくれんか」
「今日はわたしは話せません」
「どうしてじゃ」
「どうしてもです。それに、私の話は本で読んだことばかりです。今日はあなたがお話をしてください」
「わしは、じぶんの国のことしか思い出せない。あとはどうでもよいことじゃ」
「私も、今日はじぶんの家のことしか思い出せないのです」
  ビルボはまた鼻をすすりました。トーリンはビルボのほうをふりむきました。さしこむ月明かりで、ちぢれた髪におおわれた小さな後ろ頭と、大きな耳の先が見えました。
「家を思って、泣いておったのか」
「泣いてなどいません。寒かっただけです」
  ビルボはもぞもぞと動きました。
「そうか」
  トーリンは少し考えたあと、後ろからすっぽりと包み込むように、ちいさなビルボをだっこしました。ビルボはびっくりしました。
「なにをするのですか」
「こうしていれば、あたたかいじゃろう」
「・・・・・・」
  ビルボはだまりこみました。たしかにあたたかかったのです。

 トーリンは、ホビットの匂いをこんなに近くでかぐのははじめてでした。ほんのりあまいミルクのような匂いがします。ホビットというものは、みんなこんなにおいしそうな匂いがするのだろうか。それともこのビルボがとくべつなのだろうか。トーリンはそう思いながら、鼻をくんくんいわせました。

 ビルボはどきどきしました。ビルボもドワーフのにおいをこんなに近くでかぐのははじめてでした。ひどくくさくて、何ヶ月おふろにはいっていないのだろうとビルボは思いました。でも長いかみとひげにはよい香りのする油がすりこんであって、ビルボはその香りをすいこむと、すこし酔っぱらったようなかんじがしました。なんだか目がまわって、すぐ耳元でするトーリンの声が、どこかとおくから聞こえるようです。
「……てもよいか?」
  トーリンの言葉は、ゆめうつつのビルボにはよくきこえませんでした。ビルボはぼうっとしたままうなずきました。トーリンのうでのなかはあたたかくて、なにがどうでもよいような気もちになっていたのです。そしてそれは、よい香りのする油のふしぎな力なのでした。この油の匂いが、ホビットにとってこんなふうに感じられるとは、トーリンにはわからないことでした。

 だしぬけに、暖かくてぬれたものがビルボのほっぺたにさわりました。トーリンの舌です。ホビットは匂いのとおりに、なめても甘いのだろうかと思ったのです。ビルボはぴくりとして、高い音で鼻をならしました。
「なにをするんですか」
「よいといったではないか」
  トーリンはよくひびく声で、ささやくようにいいました。耳もとにその声をきくと、ビルボはぞくぞくして、からだじゅうのちからがぬけてしまいました。
「こっちをお向き、小さなホビットよ」
  トーリンはささやきました。ビルボはおとなしくいうことをきき、もぞもぞと寝返りをうって、すっぽりとトーリンのうでの中におさまりました。トクトクと鳴っている心臓のひびきが、トーリンにも伝わりました。ビルボは聞かれるともなく、いいました。
「…わたしはただ、自分のホビット穴のことを考えていたのです」
  トーリンは目をまるくしました。
「おお、それはわしも聞きたいと思っていたのじゃ」
「ホビット穴のことをですか?」
  トーリンはうなずきました。
「それをバギンズ殿に聞くのは、失礼かと思っていたのじゃ」
「なぜですか。失礼なんてことはありません。お聞きになりたければ、いくらでも話してさしあげましょう」
  トーリンはさっと顔を赤らめましたが、暗いのでビルボにはわかりませんでした。

(…後略…)


 

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